住職のつぶやき

 3月〜4月にかけては別れと新しい出会いとが交錯する月です。殊に季節の変わり目は悲しい親子の別れ、夫婦の別れ、友との別れ会者定離(えしゃじょうり)の耐え難き嘆きが巷に満ち溢れております。私のお寺も例外ではございません。たった50軒の檀家数なのに3月28日には横浜市の春櫻院様が79歳で、そして4月5日は大仙市の浄心院様が82歳でそれぞれ他界なされました。有り日しの素敵な笑顔を思い出しつつ、生前中のご厚誼に深謝し謹んで追善のご回向を申し上げます。


 横浜市の春櫻院様のご家庭は、旦那様と二人娘の二女の嫁いだ世帯と一軒家で生活を共にしております。当家にとっては初めての仏様ゆえ49日の満中陰に合わせ、お墓を建立し埋葬したい旨を旦那さまからご相談がありました。しかし、よくよくお話をお聞きすると、二女の嫁いだ旦那様はご長男で跡取りとのこと、旦那様のご実家のお墓と妻の実家のお墓を二つ守っていくことは、困難を極めるのでは・・・・・と伝え、お寺にある合同塚“法縁廟”についてご説明をさせて頂き、選択肢の一つに加えて下さいとご提案をさせていただきましたところ、二人の娘夫婦と相談の結果、法縁廟にお世話になりたい旨が即答でありました。


 永代供養といって近い将来に跡取りがいなく無縁になる場合に高額な供養料を納め、末代までお寺で供養をしてもらうという方法も当然の如く選択肢の一つとしてありますが、私の住む秋田県は限界集落(人口の50%が65歳以上の高齢者で冠婚葬祭や自治など社会的共同体としての機能が維持できない集落) が2010年11月、過疎法による調査の結果、県内に少なくとも 165集落あると分かり、その中でも私のお寺がある仙北市(407集落)は23集落と秋田県でも二番目の多さで、20数年後には秋田県全体が限界集落になるとも予測されています。このような状況下で、永代供養をお願いする蓄えも無い、自分の死後まで遠方の子供たちに負担を掛けられない、あるいは身寄りがなく墓を守っていく後継者(護持会費・墓地管理料を納め続けることが困難)がいない方々の為に、納骨料は境内墓地一区画の永代使用料と同額の30万円と設定し、嫁いだお子様たちや遠方のご親族の方々に負担のかからない方法 (合同塚に納骨されている物故者の縁者へ、お寺から合同供養祭のご案内を年一回させて頂き、参列出来る時にはお焼香に来ていただくという新しいスタイル)限界集落スタイルを此処に企画立案させていただいたのです・・・・・


 また大仙市の浄心院様のご家庭の場合、ご長男様は勤務地の秋田市内へ土地・家を母親との同居も勿論視野に入れ購入しましたが、長年住み慣れた所から離れたくないという母の意思を尊重し、それぞれの地で生活を営んでおりました。しかし老いは逃れられない人の定め、母親が転倒し骨折したのを機に、晩年はご長男様ご自宅付近の介護施設入居を余儀なくされました。(ご長男夫婦とも共稼ぎの為)当然の如く3年近く空き家にしていた実家と、故人の知り合いも近所にいないご長男宅へ御遺体を安置することは適切ではないと判断なされ、私のお寺で過日オープンしたばかりの“セレモニーホール蓮桜殿”にお世話になりたいと母親の訃報と共に一報が寄せられました。故人の姑さんも信仰熱心な方でお寺の総代も勤めていただいた方だけに、蓮桜殿第一号の利用者となって下さり本当に有りがたいことだなと感謝しております。また檀家さんだっただけに率直な感想やアドバイスを拝聴でき、次回利用者のために改善策もみつかり早急に改善もさせていただきました。


 昨今の住宅事情は申すに及ばず、上記のような方々(高校卒業後、大学・専門学校へ進学し、地元へ希望の就職先が皆無の状況の中、大都市で就職し田舎の実家には老いた両親だけが残る昨今の現状)のためにお役にたてればというのが、この“セレモニーホール蓮桜殿”(宿泊可能・遺体安置可能)のきっかけであります。人口の50%が65歳以上の高齢者で冠婚葬祭や自治など社会的共同体としての機能が維持できない集落、所謂限界集落スタイル型の葬儀へ移行する突破口となったような気がします。問い合わせも結構多く、万が一の時には・・・・(予約?)も数多く頂きました。長〜い目で“セレモニーホール蓮桜殿”を育てていきたいなと考えております。合掌

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